NO.12 「豊かな環境が脳を育むという話」 02.09.04


 脳の研究が最近は日進月歩で、これは生きている人間の脳のどの部分が活性化しているかをリアルタイムで見れる機械が開発されたからだそうです。
そして、その結果を教育に生かそうという取り組みがなされるようになってきました。

 脳の研究をされている北海道大学の澤口俊之教授によれば、まず、
1. 人間の知能や、性格に影響を与える遺伝的形質は60%程度で、後の40%は
  生後の環境によって支配される。
そうです。

 そして、その環境ですが澤口教授は、遺伝的形質が同じネズミを使って次のような実験を行ったのです。
それは…このネズミたちを1.育つ環境が豊か 2.育つ環境が普通 3.育つ環境が貧しい の3グループに分けて飼育をしました。、
1. のネズミは広いケージに10匹程を入れ、輪回しや階段などの遊び道具を入れました。
2.のネズミは普通の大きさのケージに2.3匹を入れて、遊び道具は入れません。
3.のネズミは狭いケージで1匹のみで飼いました。無論遊び道具は無しです。

 結果はどうだったでしょうか…1の豊かな環境を与えられたネズミは3の貧しい環境で育ったネズミに比べ、脳が10%も重く、(重いということは神経回路が豊かに発達したと言え、)実際、記憶力や知能テストの結果も圧倒的に3のネズミよりも優れていたのです。
これはネズミでの実験なので即ち人間にあてはめることはできませんが、同じ哺乳類なので本質的に同様なことがいえるでしょう…と澤口教授は述べています。

 また、大変怖いことですが子どもの頃(ネズミでは生後1ヶ月間)に貧しい環境で育ったネズミは、その後普通の環境に戻しても、貧しい環境で育ったことによる悪影響(脳が軽い、知能が低い)は生涯にわたって続いたそうです。さらに、幼少の頃に「貧しい言語環境」に育った場合、この後も言葉の能力を充分に発達できないという事例もいくつかあると同教授は述べています。

 子どもたちにとっての「豊かな環境」…現代社会では与えるのが難しくなってきているのが実情かと思いますが、ちょっとした工夫で状況を変えることは可能と思います。
 無論、私達は子ども達を預かるプロとして、本当に「豊かな環境」を与えることができるよう、毎日努力していくつもりですが、皆さんのご家庭におかれましても、お子さんの未来のため、少しでもこのことを考えていただければ幸いと思います。