NO.24 「子どもに関わる方にお勧めの芥川賞」 04.03.05




19歳、20歳という史上最年少の女性受賞者を出し、話題となっている芥川賞であるが、

保育者・教諭、またお子さんをおもちの保護者の方など子どもに関わる方に是非お勧めしたい芥川賞受賞作品がある。
それは、1958年・第38回の芥川賞受賞作 「開高 健」の「裸の王様」である。

主人公の「ぼく」は画塾を開いている。そこに友人の紹介で「太郎」という子が入ってくる。
「太郎」の父は絵具会社の社長であり、家庭は裕福だが、実の母は死亡しており、後妻となった母に育てられている。
後妻の母は、その教育的義務感からか「太郎」に必要以上に厳しい躾をし、その結果「太郎」は「服が汚れるとママに叱られるよ」とフィンガーペイントの壷に指を入れることもせず、殆ど絵も描こうとしない…。

その後「ぼく」はデンマークの子どもと、自分の画塾の子とアンデルセンの童話の絵を描いて交換する企画をするが、その企画は太郎の父によって、商業色の強い全国的なコンクールになってしまう。
無論「太郎」もそのコンクールに参加するが、彼の描いた「裸の王様」の絵とは…。

私が「開高 健」氏の作品に出会ったのは別な作品からであるが、この作品を読んだ時、短編ながら何と鋭さと無駄の無さをもった作品であろうかと感銘を覚えたのを今でも鮮明に記憶している。

作品の根底に流れる現代社会への怒り、その犠牲となる幼い子ども達の心の救済を訴える輝きは、発表後40年を過ぎた今も全く失われてはいない。

「パニック・裸の王様」 開高 健 著  新潮文庫