NO.3 「郊外大型古書店のヨロコビと憂い」 01.03.09


                             −今回は本の話です。−
 当園は絵本の読み聞かせを保育の中心にしているので、本とは切っても切れない関係にあります。普段読んであげているのは、9割方絵本ですが、児童文学も少し含まれます。

 ところで最近、郊外に広い駐車場付きの古書店が見かけられるようになりました。その中の一つに行った時のことです。
 昔から、何度か古本屋さんには足を運んだことがありますが、まず、従来型のお店と違うのは、明るくて新刊を扱っている一般の本屋さんと見分けがつかない位だということです。
 店内に入ってみると、まずその在庫量に驚かされます。並んでいる冊数も大型郊外書店とそれ程変わりはないでしょう。それと、特筆すべきは古本→あまり綺麗ではない。という一般観念からすると、かなり綺麗な状態の本が多いということでした。これは何故かというと、後でテレビのニュースで見たのですが、本をクリーニングする機械で綺麗にしてくれているらしいです。
 漫画を立ち読みしている中高生の間をくぐって、単行本の売り場に行きます…。一般書店ではどんどん売り場面積が減ってきている傾向の単行本ですが、たくさんあります。良く見ると、この棚全て100円のコーナーがありました。

 写真に写っている、シーア・コルボーンらによる「奪われし未来」、阿部公房の「方船さくら丸」は、このコーナーにあったものです。
どちらも前から気になっていた本でしたが、値段のこともあり、先延ばしとなっていました。双方ともとても綺麗な状態で、特に後者などはハードケースに入って、懐かしいパラフィン紙に包まれていました。
 児童書のコーナーへ移動します。何とそこには全て50円のコーナーまでありました。C.Sルイスの「ライオンと魔女」はここにあったものです。(今、同じ英国出身の作者による「ハリーポッター」シリーズが世界中でベストセラーとなっていますが、その源泉的な要素も持つファンタジーの傑作と思います。特に汽車のプラットホーム付近から別世界へ行くところなんか…)

 以上3冊全てで250円でした。

 消費者にとって、この予算でこれだけの内容の比較的きれいな本が買えることは、作家の「椎名 誠」的表現を借りれば、「ヨロコビ」であります。しかし、例えば神田とかにある老舗の古本屋の主人、近藤 歳三 62歳(仮名、勿論架空の人物)からすれば、「冗談言うない!」ってことでしょう。もし自分がそうだとしてもこの値段では売れないと思います…。
 この訳は、こういったタイプの郊外大型古書店は、お客から本を買い取る時の基準として「出版年が新しいものか」「本の状態がきれいか」の2つで判定していると先述のテレビニュースでは述べていました。そのことで、特別な知識がなくても買取基準が示せ、誰でも店舗経営が可能になったということだそうです。

 高校の時の友人で純文学がとても好きな奴がいて、「この本は作家○○の初版本だ。売りに出したら高いぞー」と嬉しそうに言っていたのを思い出し…、安い値段でいい買い物ができた「ヨロコビ」を感じる反面、小学生の娘の依頼で一緒に買った「ガラスの仮面」1巻450円を持ちながら、ちょっと複雑な気持ちで店を後にしたのでした…。