NO.32 「さすまたのいる社会」 05.3.09


 当幼稚園にも、「刺又」(さすまた)が今のところ2本ある。一本は職員室に、もう一本は園舎中央に配置されている。何でもこの「刺又」…江戸時代に刃物を振り回す悪人を安全に捕らえるために考えられたらしい。
そういえば、昔見た時代劇で「銭形平次」と一緒の捕り方が何人か持っていたような気もする。もちろんこんな派手なカラーリングではないけれど。

 今日のニュースをみていたら、市内の小中学校全部に市の予算を使って配置する自治体が現れたそうだ。
でも、よく考えてみていただきたい。
なぜこんなものが必要になったのか…。

 たとえば10年前にこれを作って学校に売りこみに行ったら、多分一笑にふされて売れなかったろうし、まして市が予算計上して大量購入することなど誰も想像しなかったはずだ。
そう考えると、どうやら我々が想像するよりずっと早い速度で、特に子どもをとりまく社会そのものが悪化しているのではないかということにたどりつく。
 事実、だいたい毎週殺人事件の報道を聞くし、殆ど毎月、虐待で痛めつけられたり殺されたりした子どものニュースを耳にするではないか。
 この日本社会は、急速に荒れてきている。社会が荒れれば、まず最初に被害を被るのは弱い立場にいる人々…つまり、子ども達である。
 悪人が増えたから刑務所を増やし(事実満員らしい)、犯罪が多いから警察官を増やし、不審者が来るかもしれないから学校に刺又を置いても、すべて対症療法で根本的な解決にはならない。

 このコラムに何度も書いてきているけれど、その流れを唯一変えられる可能性があるのは「教育」。それも特に大事なのは10歳になる前のものであることに皆が気付き、心していかないとますます子ども達をとりまく社会環境はひどく、まずしくなっていってしまうことだろう。

 壁に掛かった「刺又」を見てこんなことを思った。