NO.40 「2つの三匹の…シリーズ 」 06.2.03

 
 ここに2つの「三匹の…」で始まるタイトルの本があります。一つは「3匹のこぶた」、もう一つは「3びきのくま」です。かなり昔から出ている話・本ですのでご存知の方も多いことでしょう。
 ただし、同じ写真に写っている本でも、話の内容・結末には大きな差があります。
まず、「3匹のこぶた」の方から…。
左の方は福音館書店刊・瀬田貞二訳。右は講談社刊・ディズニー名作童話館と記されています。福音館の方では → 2匹のこぶたはおおかみに食べられてしまう → 生き残ったこぶたは、おおかみをことこと煮て食べてしまう。となっていますが、講談社の方では → 2匹の子ぶたはおおかみに食べられない → おおかみは煙突からなべに落ちるが火傷をして逃げていく。という話です。

次に「3びきのくま」。左の方はミキハウス刊。右の方はチャイルド社刊。話の進み方はほぼ同じですが、結末でミキハウスの方は → 家に侵入した女の子を3匹のくまが怒って追い掛ける。 チャイルド社の方では → 3匹のくまは特に怒りもせず、追い掛けることもしない。となります。

 こうなると、どちらが本当の話なのだろうと思われるでしょう。実は、原作に忠実なのは共に左の方です。主にアメリカや日本においては、子どもには残酷な話や悲しい結末はふさわしくなく、全てハッピーエンドな話に変えた方がよいという考え方があるようです。極端な例だと、ハリウッドで映画化された「フランダースの犬」、主人公ネロはパトラッシュと死なずに立派な絵描きに成長しめでたしめでたしとなるみたいです。(そういえば、リトル・マーメイドも海の泡にならずに王子様と結婚します。→ 「人魚姫」じゃないよと言われればそれまで…)

 今まで、絵本の研究を専門にされている方、また編集者の方の著作を読んだり、話を聞いたりしてきましたが、皆さんが異口同音におっしゃるには、「子どもには原作に忠実なものを…」です。特に上の「3匹の…」は昔話の採話ですが、長い年月をかけて磨かれた昔話を体よく変えてしまうのはどうかなと思います。

 ちなみに、右の類の本を当園で読み聞かせるということはありませんので、保護者の方はご安心ください。

 また、なぜ原作に忠実なものが良いのかということを詳しく勉強されたい方は、
「絵本とは何か」松居 直 著   日本エディタースクール出版局 刊 をご参照ください。