NO.5 「とても深い芋掘りの話」 01.11.07


               
 −先日、みんなでお芋掘りに行きました…。−

 上の写真はその時の様子です。左の子…一生懸命掘っている最中です。真ん中の子…5本目のお芋を、「まだあるかなー」と探しています。一番右の二人…掘り出した大きなお芋を持って満足気です。どの子もみんな楽しそうです。
 当たり前のことですが、芋掘りは、栗拾いとは違います。
栗と違って、芋は地中に埋まっているので掘らなくてはなりません。大人が掘るには簡単ですが手の小さな子どもにとっては大変な作業です。畑に着いて、芋の頭を発見し、回りを一生懸命掘り、力いっぱい引っ張ってやっと掘り出すことができます。
中には、ちょっと掘っただけで「とれないー」とあきらめかける子どもも居ます。そんな時は、「お芋の周りをいっぱい掘ってごらん」と声を掛け、しばらく見守ります。芋の大半が見えてくると、ほとんどの子が芋を引っ張り出すので、「がんばれ!」と励まし、抜けないようなら「もう少し周りを掘って」とアドバイスします。そうすると、芋から生えていた小さな根が切れて、「スポン」と芋が抜けて来るのです。
 ここで、子ども達はとてもうれしそうな表情をして周囲を見回し、「ねー見て。とれたよー」と言います。これは自分が達成したことを誰かに見てもらい、認めてもらいたくて仕方がなくなるからです。そこで、「すごい!やったね」と言葉を掛けてあげます。すると子どもの中の達成感は、より深まるわけです。
 こういって得た「達成感」というのは、ある意味で、人生の原動力であるとも考えられます。何かを一生懸命やって達成することは、人生における究極的な「楽しみ」であるからです。例えば大人の皆さんに共通する体験としてあると思うのは、「逆上がりができた」「自転車に乗れた」等のことです。
 達成感が得られれば、それが新しいことをやってみようかという意欲や、物事への「好奇心」につながっていきます。「好奇心」というものは「学習意欲」の源でもあるのです。

 こういった「達成感」を日々の「遊び」の中で獲得していくことは、子どもにとって本当に大切なことです。
 でも、現在の子ども達をとりまく「遊びの環境」を考えてみると決してよい状態であるとは思えません。
やる前から既に結果が決まっているものや、遊びの過程で工夫や創造がいらないものが主流を占めている気がします。ある意味では、子ども達が主体となって「遊ぶ」ものではなく、「遊ばせられる」ものが溢れているとも言えます。なぜかというと、そういったものにしなければ、ビジネスとしては成り立ちにくいからです。

 小さな子どもにとってその「遊び」が良質かどうかの簡単な判定基準として、「遊ぶことに、電気を使うか、使わないか」があげられます。どちらが良いかは、ここまで読んでくださった方には、すぐにお解りのことと思います。
 子ども達にとって本当に良質な「遊び」は「自然」の中に数多くあります。また逆から見れば、自然の中に「遊ばせられる」ものは存在しません。
私達保育者には、子ども達に本物の「遊び」を提供する義務があります。今、子ども達の「生きる力」の不足が指摘され、小学校などでは「総合的な学習」の時間が設けられたりしていますが、幼児期に「遊ばされる」のではなく、「遊ぶ」ことこそ、「生きる力」を獲得する王道なのです。

 保護者の皆様も、今、あなたのお子さんが遊んでいる「遊び」について少し考えてみてあげてください。そして、できるだけ良質の遊びが可能なよう、配慮してあげてください。それが何より、お子さんにとっての本当の幸せ」につながることと思います。

 以上、とても深い…芋掘りから…遊びの話でした。