NO.51 「針の振り過ぎじゃ?」 09.05.8

  少し古い話で恐縮だが09.3.26付の朝日新聞によると(一面にかなり大きく出たので記憶にある方もいらっしゃるかと思うが)東京都品川区は「小1プロブレム」(小学校1年生が着席しなかったりして授業にならない状態)に対応するために全幼稚園と保育園を対象に小学校との一貫教育を行い、その中にはひらがなの読み書き、1桁の足し算引き算が含まれているそうである。
  確かに、永年の「ゆとり教育」のせいかどうかはわからないが、日本の子どもの学力は低下傾向にあるようだし、席に座って話を聞けない小学1年生が沢山いるようになって、小学校低学年の担任の先生はかなり苦労しているようだ。

  しかし、かといっていきなり幼稚園・保育園の段階で「計算」を教えることはどうかと思う。この時期の幼児にとって大切なのは、何ができたかを競うことではない。その前の人間としての基礎…・樹木で言えば根を大きく育てることがとても大切なことなのだ。

 幼稚園の創始者のフレーベルは幼稚園をキンダーガルテン…そう庭に例えた…。子どもはその庭の花や樹木、保育者(保護者も入ると思うが)は園丁(庭師)である。
庭師が木や花を早く大きくしようとして、水・肥しをやりすぎたらどうなるだろうか。根腐れや肥料やけを起こして枯れてしまう。かといって全然やらなければ当然それも樹木を枯らすことになる。実にうまい例えである。

 このサイトの読者のような方は重々ご承知と思うが、学力・教育レベルが世界的に高いフィンランドなどの北欧諸国では「早期教育」や「行き過ぎた教え込み」などは全然やっていない。そんなことが無意味なのがとうの昔にわかっているからだ。(アジア地域の一部の国では業者の先導の下に盛んなようだが…)
 このサイトで繰り返し述べているように、就学前の子どもに特に大切なのは「人の話を聴くこと」である。その先を求めても必ずと言っていいほど長期的に見れば「あまり意味がなかった」ということが多い。こっちがだめだからいきなりあっちと針を振り過ぎるのはいかがなものか…。
子どもの…長期的な…未来の真の幸せのことを考えている方々は皆そう考えているのではないかと思う。