NO.52 「若田さんとザリガニ釣り」 09.07.01

 私はあまりテレビは見ないのだが、先日「情熱大陸」という番組を偶然見ていたら、さいたま市出身でNASAの現役宇宙飛行士をされている若田 光一さんの特集だった。
 その中の、さいたま市の実家に里帰りされた時の映像で、若田さんのお母さんが若田さんの小学校1年生当時のエピソードを語った。
「当時の光一はザリガニ釣りに没頭していて、学校から帰るとすぐに仲間と毎日ザリガニ釣りに出かけていました。あまりに没頭しすぎて暗くなってから家に帰ってくるようになったので、父親にもっと早く帰るようにと注意されたのです…。」
「その後、明るいうちにきちんと帰ってくるようになったので、急にどうしてそうなったのか不思議でした…。」
ある日、いつものようにザリガニ釣りに出かける光一少年の自転車を見ると、荷台に風呂敷包みが載っている。
「それは何?」と聞くと、光一少年は風呂敷の中から家にあった大きな目覚まし時計を取り出し、「これをザリガニ釣りの場所に置いておいて、時間になったら皆に声をかけて帰るようにしているんだ」と答えたという。(当然ながら当時は小学生が腕時計を持つことは無理だった)
 このことから、7歳当時の若田少年が仲間と活き活きとザリガニ釣りに没頭し、そして父親から提起された問題を自分なりに考えて見事に解決、さらにリーダーシップも発揮しているということが見て取れる。
 大げさに言うと、これは今国際宇宙ステーションでロボットアームのスペシャリストとして活躍している若田さんの、人間形成の原点とも言えるのではないかと思う。(実際の宇宙では色々な問題が頻発し、それをうまく解決していく能力が必須だと若田さん自身が語っていた)
 この当時に比べると現代の子どもは、よく言われているように3つの「間」が不足している。それは、1.時間 2.空間 3.仲間。 → 1.塾やおけいこ事に追われ… 2.ザリガニのいる水路や、原っぱもなく… 3.友達もあまりいない…のだ。
それらを現代に、すぐに取り戻すことはできない。でもそういったことを我々大人が真剣に考え、少しでも良い方向性を示してやることが、次の社会を担う子どもへの義務ではないかと思う。