NO.58 「絹漉しの…雨」 10.06.04

6月になりこれから、毎年うっとうしい梅雨の季節がやってきます。これは南の高気圧のもつ暖かい空気と、北の冷たい空気が丁度日本列島の上でぶつかり合い、梅雨前線が発生するためです。その時の前線の位置によって雨が降りますので、一般的な低気圧の通過によると違って、一旦止んでも又降り出したりと、長期・長時間に渡ります。なので前記の「うっとうしい」という表現の雨となるのでしょう。

一方、日本語の雨の表現には多種多様なものがあります。にわか雨、通り雨、驟雨(しゅうう)、天気雨、長雨、氷雨(ひさめ)、小雨(こさめ)、霧雨(きりさめ)、時雨(しぐれ)小糠雨(こぬかあめ)、五月雨(さみだれ)春雨(はるさめ)等々。まだまだ沢山あると思いますが、これだけの雨の表現が存在する言語も珍しいのではないでしょうか。

 アニメ監督の宮崎駿氏が「もののけ姫」を制作した時、日本は「水蒸気・湿度の国」であり、それを表現したかったと述べていましたが、雨の表現が多岐にわたることは日本人が太古から雨というものに付き合ってきた民族であることの証なのかもしれません。

 それともう一つ、「こどものとも」を創刊した福音館書店の松居 直(まつい ただし)さんの講演で…。直さんが子どもの頃、お母さんに絵本を読んでもらっていて、ふと軒先を見ると、いつのまにか小糠雨(こぬかあめ)が降りだしていた…その時、「あ、絹ごしの雨が降り出したわね」とお母さんが言ったそうです。「絹漉しの雨」という表現があるのかどうかはわからなかったが、とても美しい表現だなと思ったのを記憶していると松居さんは述べられていました。

こういった「幸運」が後に松居さんが数々の名作の絵本を刊行する潜在的な力になっていったのだろうと私は思います。

「知識」はいつでも身に付くが、「感性」は大人になってからでは身に付きにくいと言われます。どうぞ保護者の皆様もお心がけください。

*この文はしらさぎ幼稚園便りH22.6月号の冒頭文です。