NO.66 「小一で、もう格差」 11.10.05

しらさぎ幼稚園

少し前になるが、厚労省職員で現内閣府政策統括官の村木厚子さんの講演を聞いた。話の主体は子育て新システム(こども園)についての説明だったのだが、その中で、全国を回って小学校の先生と話をすると、小学校1年生段階での「格差」が広がっていて現場はとても苦労している。その底辺を底上げして格差を少なくする意味で子育て新システム(こども園)を進行させているとのことだった。
 小学校1年生での「格差」そう「小1プロブレム」のことである。授業が始まっても席につかず、教室内を走り回る。全く教師の話を聞かない。こういったことでは授業を始めることもできず、クラス全体が授業を聞くようになるまでに1学期間を費やしたという報告もなされているとのことだ。
 恐ろしいことに、ここで生じた「格差」は時間の経過と共に開いていく。学習というのは蓄積である。高学年・中学と進むにつれて、勉強が解らず→解らないから興味が無く→興味がないからさらに勉強しないという悪循環サイクルとなるからである。
 友人の兄で、いわゆる底辺高校の英語教師をしている人の話だが1年生の授業の最初の頃の目標はブロック体でアルファベット全部を書けるようにすることだという。(中学ではなく、高等学校 !)また同僚の数学教師によれば、分数の足し算ができない生徒が結構いるので通分を教えていると言っていたそうだ。(通分→小学校の分野)
 こういった生徒の中からは中々安定した職業に就くことができずにドロップアウトしたり、中には犯罪に手を染めてしまったりする者が出現してしまう可能性がどうしても大きくなっているのが現状である。
 こういうケースが多発する場合の社会的コストは図りしれなく大きくなる。(警察・更生施設・被害者の救済等々)
これをふまえ、北欧等の教育先進国では「幼児教育」に力を入れている。年齢が大きくなればなるほど、教育し直すには費用も時間も加速度的に大きくなるとの試算結果が出ているからだ。幼児虐待が右肩上がりで増加し、いわゆる底辺層の増加が懸念されている日本では、社会福祉の観点から子育て新システム(こども園)を普及させてこういった人々を救済していくということも必要であろう。  一方幼稚園という学校・教育機関に携わる我々にとって、これからも「学校・学習生活」のスタートの基本・鍵となる「人の話を聴く力」をつけることを第一目的とし、力を注いでいくことは言うまでもない。そしてその特効薬として「読み聞かせ」を使うのだ。