NO.67 「宮崎駿・中川李枝子・いやいやえん」 12.1.07

昨年末にアニメーション監督として名高い宮崎駿さんの書いた「本へのとびら」−岩波少年文庫を語る−(岩波新書)という本を入手しました。
 これは、スタジオジブリにて作成された「岩波少年文庫の50冊」という小冊子に宮崎監督自身が加筆したものを一冊にしたものです。何と宮崎さんは学生時代「児童文学研究会」に所属していたそうで、この本の中で紹介されている本が、スタジオジブリのアニメに少なからぬ影響を与えているのがよく解ります。(直接的にはアリエッティの原作も入っていますね)
 そしてこの本の中で岩波文庫ではないのですが、今も子ども達に大人気の「いやいやえん」(福音館書店刊)が「衝撃的だった」としてとりあげられています。著者は「ぐりとぐら」の中川李枝子さんです。宮崎さんは中川さんを「別格」として取り上げ、中川さんの師で日本の児童文学の礎を築いたとも言える石井桃子さんと共に(自分が)「歯が立たない女ども」(笑)と表現しています。確かに「いやいやえん」は凄いです。発刊から50年近くになろうとしているのに、今だに子どもの心を捕え続け、色褪せることがありません。まだお持ちで無い方は是非一度手にとってみてください。
 「子ども達にとっての遊びの世界って、現実と空想の境目がないんですよ。空間にも時間にも束縛されていません。中川李枝子さんは、それをそのまま受け取めてそのまま書ける人なのです…」宮崎さんはこう記しています。実際に保母をされていた経験がこういった力を培ったのかと思います。
そういえば今度「となりのトトロ」を見る機会があったらテロップに注目してみてください。やはり子ども達が大好きな歌「さんぽ」の作詞者にちゃんと「中川李枝子」と出てきます。
そしてまた岩波少年文庫の50冊の中のことですが、宮崎さんが多大な影響を受けていると思われる作家の中に、サン・テグジュペリと宮澤賢治があります。賢治の本についてもとても素敵な紹介文を書かれているのですが、「紅の豚」「天空の城ラピュタ」に表現されているように飛行機・空が大好きな宮崎さんの作品に影響を与えていると思われるのが飛行家でもあったサン・テグジュペリの本です。最後に「星の王子さま」の紹介文を引用させてもらいます。
「最初に読み終えた時の気持ちが忘れられません。言葉にすると何か大切なものがぬけ出てしまうような気がして、だまりこくってシーンとしていました。一度は読まなければいけません。大人になったら同じ作者の「人間の土地」も読んで下さい。」