21世紀のコラム 
 


 −しつけはどのようにしたら…?−
子どもをもつ、みなさんがお悩みのことと思います。
 こうすれば絶対…というものは存在しませんが、思い当たる節を述べてみます。

−しつけの基本−
しつけの基本は2つあります。
1.繰返し伝えること   2.待つこと   です。

しかし、現実はというと、ニ人の子をもつ自分も含めてですが、
1.繰返しは伝えず… 2.待たない となっていることが多いような気がします。

繰返し伝えること…は、面倒なことであり、忍耐力が要ります。また、大抵の子どもはすぐにはできるようになりません。スイッチ一つですぐに結果が出ているものに日々慣れている現代人にとってはさらに我慢がなりません。

待つこと…も、せっかちな現代の日本人は苦手です。エレベーターの「閉じる」のボタンを押したがるのは日本人だけだと聞いたことがあります。大手ハンバーガーチェーンの調査だと、お客は40秒待つことを境にイライラし始めるそうです。

先日、ある医院の待合室に行く機会がありました。
赤ちゃんを抱いたお母さんと、2歳位の男の子が入ってきました。
子どもの来院も多いらしく、雑誌などと共に絵本やおもちゃなどが置いてあるコーナーがあり、男の子は真っ先にそこへ行き、おもちゃの自動車などを床に置いて遊び始めました。
お母さんは、小さな女の子の赤ちゃんを抱っこして、ニコニコしながら男の子を見守っています。
しばらく遊ぶと、男の子はおもちゃで遊ぶのに飽きてしまいました。片言の言葉でお母さんに「絵本を読んで」と言っているようです。
お母さんは、「それじゃ、○○ちゃんが遊んだおもちゃを片付けてね」と言いました。
その子は、すぐにおもちゃのコーナーへ行って、遊んだ物を棚の上にのせています。
そして、次には数冊の絵本をつかんで持ってしまい、バラバラと何冊かの絵本が床に落ちてしまいました。
お母さんは、「○○ちゃんが読みたい本を一つだけにして、あとはお片付けね」と言いました。
するとその子は、気に入った「のりもの」の本だけを選び、床に落ちた他の本は本棚に戻しました。
「のりもの」の本を持っておかあさんの所へ来ると、お母さんは、「ありがとう、きれいになったね」と誉めてあげました。
そして、、お母さんはその子に「のりもの」の本を読み聞かせ始めました。

男の子は、まだ言葉もはっきりと出ず、足取りもしっかりしていないヨチヨチ歩きの子です。
これだけのことができるようにしつけるには、相当「繰返し伝える」ことが要ったことでしょう。
ちなみにこのお母さんは、拝見するところ特に良妻賢母型といったところはなく、髪も少し茶色に染めていましたし、どちらかというと、典型的な今時の(失礼!)若いお母さんでした。
でも、子どもに声を掛け(伝え)、暖かく見守りながら(待つ)ことができているから、この男の子も自然に片付けることができるようになったのでしょう。久々に感心した光景でした。

最近、公共の場所で親子連れの方を見ると、子どもが奇声を発したり、バタバタとうるさく走り回ったりして他の方に迷惑を掛けていても、一向に注意をしない(伝えない)方がいます。
子どもは、どのようなことをすると「人の迷惑になる」ということは知りませんから、「伝える」ことをしなければ、ずっとわからないわけです。

そして昨今の事態はさらに進み、このように子どもが他人に迷惑を掛けていても、そのことに「全く気付かない」親御さんもいるようになってきている気がします。子どもに対して「無関心」なことほど不幸なことはありません。まあ、この文章をここまで読んでいらっしゃる方には無用の事と思いますが…。

私は、子どもは大人よりずっと自然に近い存在だと思っています。例えば桜の花が一夜にして急に咲かないように、一度しつけをしたからといって、急にペンキで色を塗ったように、またこのコンピューターのエンターキーを押したかのように変わるわけはないのです。

どうぞ、先述のお母さんのように、暖かい眼、自然に接するような長い眼でお子さんを見守ってあげてください。そして、繰返し「伝え」、「待って」ください。そうすれば、必ずお子さんには生涯の財産となるよい「習慣」が身につくことと思います…。

注:危険を伴う場合や、他人を傷つける恐れがある場合は、「待つ」必要がないのは言うまでもありません。