ピンク、ぺっこん
           福武書店 刊
「村上 康成 氏の自然描写について」
 絵本「ピンク、ぺっこん」は、村上 康成氏の絵・文によるものです。続編として「ピンクとスノーじいさん」「ピンク・パール」の2冊があります。小学館のアウトドア雑誌「ビーパル」などで、何回も紹介されていることもあって、氏の絵を見たことがある方も多いことと思います。氏の絵は、いわゆる図鑑の絵のような詳細・詳密な絵ではありません。でも、本当に普段数多く自然の中に出ていらっしゃって観察されていることが各所に見うけられると思っています。今日はそんな観点から、この本を紹介いたします。

カゲロウを食べるピンク

カゲロウの幼虫を横取りするおばさんヤマメ。きちんとメスだ!

ホバリング(空中静止)するヤマセミ

岩魚を捕らえたヤマセミ
1.ピンク(ヤマメの幼魚)について
  まず、ヤマメの稚魚や幼魚は、たいてい川の中では群れになっています。これも正確に描かれています。そして、本当にヒレの先端が桃色です。だから「ピンク」なのでしょう。

2.ヤマメのおばさんについて
  ヤマメは大きくなるにつれて、オス、メスの特長がはっきりと現れてきます。オスは頭が直線的なラインになってきますが、メスは丸い感じになります。ヤマメのおばさんの頭は、その特長をよく表して描かれています。

3.ヤマセミについて
 カワセミは、目立つブルーの色合いと、生息個体数も割といることで見たことがある方も多いと思いますが、ヤマセミにはなかなか出会えません。カワセミより二まわり位大きく、本当にきれいな山の渓流に住んでいます。かくなる私も20年以上、山に入ってフライフィッシングをして来ましたが1度しか出会っていません。出会った時のことは未だに鮮烈な記憶として残っており、いい魚が釣れた時よりうれしかったのを覚えています。

4.その他
  ここには紹介しませんでしたが、他にもイタチやウサギ、カワガラスなども愛嬌たっぷり、そして特長はよく捉えて描かれています。カワガラスというと、カラスの仲間かと思われるかもしれませんが、全く違う種類です。潜水することができ全身を潜らせてペンギンのように水中を泳ぎ魚を捕らえます。 渓流の淵を何メーターも潜ってから、プカリと浮かんでくる姿はとてもかわいげがあります。

そんなわけで、できればお子さんと一緒にこの本を楽しんでから、実際の生き物を見てみてください。自然の中で本物を見るのは、かなり難易度が高いので、水族館や動物園に行って見るのもいいかもしれません。いかに村上氏が特長を捉えて絵を描いているかかお解りになると思います。こういった生き物達に親しみが増すことうけあいです。

また、シリーズ2作目の「ピンクとスノーじいさん」はボローニャ国際児童図書展グラフィック賞を受賞しています。